初めて竜飛岬へ自転車で行った時、勾配12%の坂で全力で踏んでるのにむしろ下がってしまい、峠全部を押して登ったという屈辱を味わい、ギア変更の必要性を感じました。
自転車のカスタマイズで一番頭を悩ませるのが、ギアや変速機まわりのいわゆるコンポーネントです。シティサイクルをスポーツ用バイク風にカスタムするためにはものすごく高い壁がありました。
コンポーネントとは
このサイトを検索で見つけてきている人には説明不要かもしれませんけど一応ね……。
自転車はペダルを踏むことで後輪が回って進むというのは言うまでもないですが、その際に連動する機械類の一式をコンポーネントと言います。ここでいう一式とは
- クランク
- フロントギア(チェーンリングとも言う)
- チェーン
- スプロケット(後ろのギア)
- 変速機
- シフター
- フロントディレーラー
- リアディレーラー
この辺をまとめた単語です。要するにメインの機械類全部です。
それでなんで悩むのかというと、
規格がいっぱいあって互換性が難しい
コンポーネントを製作しているメーカーは3社で世界シェアのほぼ全部を占めていて、その中でもシマノが圧倒的みたいですね。スポーツ用バイクではシェア85%とかなんとか。
そんなシマノでも時代が違ったりMTB向け・ロード向けなどで互換性がない製品もあって、カスタムする前に「いま自分が乗っている自転車の規格」を把握してないと、パーツを買う時点で盛大に失敗することになりますので、入念な下調べが必要になります。
金額的にお高め
高級なロードバイクは何が高いかってコンポーネントが高いんですよね(もちろんフレーム本体も高いですが)。最高級グレードだとコンポーネント一式だけで20~30万みたいです、私のチャリ20台くらい買えるんですけど。
そこまでの高級品はマイチャリにはオーバースペックですので圏外ですが、シマノの一番下のグレードのクラリスでも、ドロップハンドル用のフルセットだと5万以上な模様です。
一気に買うのはお小遣い的に厳しいので、ちょっとずつ入れ替えする作戦でカスタムを進めていきました。
もともとの構成
シマノのブランド名がついているグレードはクラリスが一番下なんですけれど、じつはその下にも無名の製品があります。そういった製品がママチャリやシティサイクルなどの一般車に使われているんですね。
私の自転車も分解して色々調べてみました。
フロントチェーンリング | GRK SXB-48 | 48T | シングルギア JISスクエア |
スプロケット | SHIMANO MF-T500-6 | 14-28T | 6速ボスフリー |
フロントディレーラー | なし | ||
リアディレーラー | SHIMANO RD-TY21-A-GS | 11-34Tまで キャパ34T | 6速専用? |
「T」というのはギアの歯の数です。自転車というものは、人間の脚のか弱い出力を大小のギアを組み合わせて、いろんな速度帯で効率よく加速出来るように設計されています。
後輪に接続される、スプロケットの歯数でどんな性格の自転車なのかがある程度は推し量ることが出来ます。小さければ平地で高速、大きければ上りでも軽く登れる。歯数の差が少なければきめ細かい変速ができ(クロスレシオ)、差が大きければ山も平地も力まずに走れる(ワイドレシオ)。
ツーリング用として考えるとワイドレシオの方が楽ですね、ツーリング最大の敵は風と坂ですので軽いギアが嬉しい。ロード用ではスプロケットの歯数は11T~34Tと幅広い歯数が選べるのですが、14-28Tは中途半端ですね。
試行錯誤
リアのギアを直接交換できれば比較的簡単なカスタムなんですけれど、一般車に使われるスプロケットはボスフリーというタイプです。これはギアスプロケットの内部にフリー(カラカラ鳴って漕がずに進めるようにする機構)が付いたもの。一方スポーツ用バイクではかなり以前にカセットフリー式に移行していて、ボスフリーのスポーツ車はビンテージバイクくらいです。現行で販売されているものはシマノでは1種類だけで、ギアの歯数の自由度はゼロです(中華製品ではあるみたいですけど、怖くて手が出せなかった)。
ボスフリーかカセットかは、ホイールのハブで決まってしまいます。いきなりホイール買い替えもなかなかシビアでしたので、他の部分で補っていこうとした記録です。
フロントギア
リアのギアが大きいほど坂が軽くなると書きましたが、厳密に言うと「前のギアと後ろのギアの比が大きいほど軽くなる」というのが正しい理解。いわゆる「ギア比」というものです。前ギアは大きほど高スピード、小さいほど高パワーです。
重量との兼ね合いで大型化が難しく枚数にも限りがあるスプロケットを、効率よく使えるように、スポーツバイクは大半がフロント2枚になっています。外側は高速走行できる大きいギア、内側に登攀に有利な小さいギアが付いています。昔のMTBはフロントトリプルが普通でしたね(遠い目
余談ですけれどフロントギアのシフトチェンジはトラブルが多く、チェーンカバーとも干渉するので、一般車にはあまり搭載されていないんだと思います。トラブルを嫌ってフロントシングル化というカスタムも流行っているようですが、私はその逆を行くわけですな……。
シフトチェンジするにはチェーンの位置をずらしてギアを嵌める装置であるディレーラーが必要になりますが、止まって手でかけかえる事でもシフトチェンジはできます。ということで、とりあえずフロントギアを交換してみました。
フロント側で低速ギアが使える事になったので、高速ギアは少しサイズアップして50Tに。
この状態で地元で激坂で有名な久渡寺を登ってみましたが、心拍数めちゃ余裕でウキウキでしたねー。フロントのシフトチェンジだけはめんどくさいですが。
シフター
さて、リア用のシフターは以前に書いたサムシフターに変更済みです。ここからフロント用のシフターも準備しないといけないわけですが、一般的なドロップハンドル用の変速機はSTIレバーというブレーキ一体型。2万円弱と少しお高めなことと、リアは7速以上の製品しか無いため、STIのメリットが全然受けられません。
サムシフターでもシフトチェンジするために一旦ハンドルを離す必要がありましたので、クラシックバイクについているダブルレバー変速でもいいかな、と考えるようになりました。
本来はフレーム本体に溶接されたダブルレバー台座が必要なんですが、ダウンチューブにクランプして増設できるパーツがあります。
いやニッチすぎるやろ、誰が買うんだ……いや買うけど。
ダブルレバー
実はシマノもダブルレバーをまだ生産しています。しかもデュラエースグレード。
しかし8速専用で、このときの6速スプロケット・リアディレーラーには対応しません。
ダイアコンペが販売しているフリクションタイプのダブルレバーであれば引き具合をアナログに調整でき、何速でも対応出来るということを知り早速購入。
ボトムブラケットの下にワイヤー受けが無いフレームですので、こういった樹脂製スモールパーツを購入し、ホットボンドで軽く固定してフロントのワイヤーを通しています。
ダブルレバーの変速は難しいのかと思っていましたが結構テキトーに引いても変速します。1時間くらいで慣れました。しかしフロントの変速はあまりスムーズにいかず、ぐいっと押すことになっていまだに少しバランスを崩してしまいます。3本ローラーの上では毎度苦労しますね…。
フロントディレーラー
シフターの問題が解決しましたので、いよいよフロントディレーラーです。
フロントディレーラーは設置方法が2種類あり、フレームに「ここにFD付けてくださいね」という台座があるタイプは直付け式を選びます。一般車にはそんなモノ無いので、シートチューブをクランプして着けるバンド式のものを購入。
なんでかフロントトリプル用を買ってしまいましたが、そこはフリクション式ダブルレバーなので問題なく引けます。
リアディレーラーのセッティングはロー・ハイそれぞれの可動域の調整だけなのでそれほど難しくないんですけれど、フロントは「ギアとの平行度・ギアとの距離・インナー可動域・アウター可動域」と3次元的な調整が必要で、時間がかかりました。
インナーからアウターに戻す時にやたら渋いのと、アウター✕ローの時にカラカラ鳴る(チェーンタッチっていうらしいです)ので、今もちょくちょく調整し直していますが、ここは未だに納得のいくセッティングにはなっていませんね。近々フロントダブル用のものに買い替えるかもしれません。
ここまでで5%くらいの登攀は余裕で出来るようになったんですが、青森県は各都市の間に10%前後の峠がザラにある立地です。空荷で走っても峠がキツイので、もうちょっと大きいリアが欲しいと思うのは必然です。
そこでちゃんとしたスポーツバイクを買う……という方向に行かないのがきのこ先輩です。
8速化への道
ギアの選択肢が出てくるのは8速以上。しかしホイールの都合で6速しか選択肢がない。それならホイールを変えればいいじゃない!
ホイールそのものを買い替える手もありますが、ナット止めのホイールでスポーツ車と同じカセット式、となると選択肢はあまりなくて、サイクルベースあさひの7速用のこれくらいしか見つけられません。お値段は安いんですが28c-38cと太めなのが残念。
カセット式スプロケットは、「ホイールが対応していない」というより厳密には「ホイールのハブが対応していない」なんです。ということはハブを変えれば行けるんですよね。
カセット式のハブに交換
ハブの交換。
簡単に聞こえますが、多分自転車のカスタムで一番むずかしい所です。
今はあまり聞かなくなりましたが、かつてはチャリカスタム道楽の最終形態が「手組みホイール」でした。そこに手を突っ込んでいくわけです。
ホイールは
- リム
- ハブ
- スポーク
- ニップル
の4種類のパーツだけで構成されていますが、それぞれのサイズが合致しないときれいな円にならないどころか、ホイールの形にすらならないこともあります。たまたま初期装備のハブが、シマノのナット式カセットハブと同じ寸法だったためハブだけで済んでラッキーでした。
取り寄せでめちゃ時間かかりました。
組み換えの工程は長すぎるし説明出来るほどノウハウも無いので省きます。届くまでの間も、スポーク全部はずして組み直す間も、「これホントに組めるんだろうか?すぐ走れる?」って不安でしたね。
組み上がってはめてみたらフレーム側のクリアランスが足りず、ハブのスペーサーを交換して改造してます。
この改造は万人にはおすすめできないので、相当な覚悟をもってやってください。
スプロケット
最大の難関であったハブ問題を乗り越えて、やっとスプロケット交換が出来るようになりました。もう感無量です。
ちなみに8速用のフリーボディはスペーサーを噛ませることで、10速や11速のスプロケットも使用可能です(チェーンやシフターも換えないとダメですけどね)。
しかしダブルレバーでそこまできめ細かにシフトチェンジしないと思いましたので、8速。上り重視でマウンテンバイク用グレードのスプロケットを購入しました。
ボスフリーは外す時に鬼のような力が必要で、なかなか外して清掃とかし辛いんですが、スプロケは気軽に外せますので気軽にメンテ出来そうで、ダブルで嬉しいです。
リアディレーラー
標準装備のリアディレーラーでも、一応変速は出来ました。なんですが、上の表で「キャパ」って書いている部分、正式には「トータルキャパシティ」と言うのですが、これが足りないと最大ギアに変速した時にチェーンがパツパツで変速できないか、最小ギアの時にたるんだチェーンが暴れるなど、安全上よろしくない状態になります。
トータルキャパシティはフロント・リアそれぞれの最大・最小歯数の差を足したものです。この状態でフロント差16T、リア差21T。足すと37Tですのでオーバーしてます。
たまたま、MTBからパーツ取りしたSHIMANO ACERA RD-M340という年代もののRDが残っていました。型番で調べるとトータルキャパシティ43T、フロント差20T、リア11-34Tまでとのことで大丈夫そう。
昔のMTB用ディレーラーはSTIだとワイヤーの引き量が違ったりで使えないことが多いみたいですが、ダブルレバーでよかったなと思いましたね……。
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