さんざん語り尽くされた感もある「低圧太タイヤvs高圧細タイヤ」論争ですけど、プロも使用している低圧太タイヤがいまだにイロモノに見られるのは「ベテランが乗ってるちゃんとしたロードバイクはフレーム or フォークのタイヤサイズ制限があるから比較出来ない」せいもあると思うんです。

そこで、もともと38cタイヤが標準装備のクロスバイクをドロハン化カスタムして25cを履いている、私の「ちゃんとしてないロードバイク」の出番!新型IRC JETTY PLUSの25c・35cを、どちらも同じ車体・同じホイールで試してみたいと思います。

今回は太さ比較に絞って書いていきます。新型JettyPlusの新旧比較は別記事でやってますので、履き替えご検討の方はこちらもご覧ください。

スペック差

そんなわけで昨年末に購入してインプレ記事を書いた新型IRC Jetty PLUSの25cに加えて、35cも入手できましたので比較していきたいと思います。

我ながら極端な購入傾向……。

計測機器などがあるわけではないのでフィーリングレビューになりますがご了承ください。

まずは数値的な差から見ていきたいと思います。

IRC Jetty PLUS25c35c
重量230g315g
チューブPanaracer 23-26C
90g
IRC WO 700×28-35C
180g
空気圧6.0-8.0 bar
80-110 PSI
4.0-6.5 bar
60-80 PSI
価格(定価)¥2,750¥3,080

タイヤサイズが大きくなるとチューブも重くなってしまうのはつらたんですね。前後で350g重量増、この時点で拒絶反応を示す人も多そうですね。TPUチューブならもっと軽くできるんでしょうけどねー……。35c対応のTPUチューブも出てきているようなので、そのうち試してみたいですね。

参考までに、同じIRCの耐パンク性重視の街乗りタイヤ「METRO」の35cは1本630gなので、それに比べたらJettyはかなり軽量な部類です。

私のホイールはアルミで強度重視の36Hなので重い部類ですが、それでもホイールのトータル重量10%増しくらいの計算。タイヤ交換して持つと、重くなったのを感じられるレベルです。サイズも相まってMTBホイールを持ったときのずっしり感に似てます。

25c・35cともにウッドカラーのものを購入しました。35cはカラー部分が広くなっているのが印象的です。カラーを良く見せたいなら太めのほうが良いのかも。前後方向からは言われないと気づかないくらいの差な感じがします。

肝心の乗り心地は?

一昔前は「細いほど速い」説一辺倒でしたけど、昨今では「太くても変わらん」説が有力になってきてますね。それを体感してみたくて今回の比較実験を行ってみましたわけです。比較と言いつつ25cは普段から履いてますので、実走は35cだけ。セッティングはこんな感じ。

タイヤ幅推奨空気圧使用空気圧
普段25c6.0~8.0 bar6.8 bar
今回の試走35c4.0 ~5.5 bar4.4 bar

せっかくなので流行りの低め空気圧にしたいところでしたが体重がかなり重い方なので、下限から1割増やした少し高めの4.4barにしてみました。タイヤ接地面が数mm広がってるのが目視でわかるくらいの空気圧なので、標準体重の人の下限空気圧と同じくらいかな?

試走で走ったのは自宅のある弘前市から青森市まで往復95km、獲得標高550mのコースを設定しました。

特に理由があるコースではなくて、あんてな青森でコーヒーが飲みたかっただけですが、天候は晴れでほぼ無風、平坦中心ながらそこそこ峠もあるコースでヒルクライムの感じも試せたと思います。

安心の振動吸収力

乗っていて一番感じたのは、よく言われる「振動が少ない」でした。路面の細かい凹凸を拾わない……というよりエアボリュームのおかげでフォークまで伝わらないというか。ライトのホルダーがすこしガタが出てまして、25cのときはギャップがない路面でもカタカタ鳴っていたのが、多少荒れた路面でも全然鳴らないのは流石だなと感じました。

それとグレーチングにも恐る恐る乗ってみましたが、ハマる危険性がないだけで安心感が違いますね。でも滑るのは変わらないので、グレーチングは避けるに越したことはないです。

35cのほうが速い(暴論)

普段と同じケイデンスで踏んでいたんですが、なんか速いんですよね。走力は増えてないし、風は速度に影響出ないくらいの微風でした。これはタイヤが大きくなった事で、タイヤ周長が長くなったのが原因だと思っています。

平地で一番良く踏むであろう、フロント50T リア15T(ギア比3.33)でのケイデンスごとの速度を計算してみました。

ケイデンス25c
(タイヤ周長2105mm)
35c
(タイヤ周長2168mm)
速度差
50 rpm21.1 km/h21.7 km/h0.6 km/h
60 rpm25.3 km/h26.0 km/h0.7 km/h
70 rpm29.5 km/h30.4 km/h0.9 km/h
80 rpm33.7 km/h34.7 km/h1.0 km/h
90 rpm37.9 km/h39.0 km/h1.1 km/h
100 rpm42.1 km/h43.4 km/h1.3 km/h
50T x 15T 各ケイデンスでの速度(理論値)

私は80rpmくらいで踏む事が多いんですけど1km/hの差が出る模様です。50x11Tで100rpmだと2.9km/hの差になる計算ですので、豪脚な人ほど太タイヤの方が速度は出るみたいです。私はそんなに踏めないですけど。

ホイールのフレを吸収してくれる

お恥ずかしながら調整不足で、ホイールに2mm程度の縦振れが出ている状態での試走でした。25cのときはホイール1周するたびにほんの少し減速を感じる状態だったのが……しかし35c、なんと縦振れお構いなしで回るじゃないですか!これはホントびっくりでした。ズボラな人ほど太いタイヤがおすすめです。

速度維持がしやすい

高速度だと路面の抵抗が増えるのかなと予想していたんですが、逆でした。抵抗はあるんだけど転がり続けようとするというか……タイヤが重くなったために慣性で回り続けようとするのかな?路面の凹凸の振動を拾いにくいことも相まって、細かいゴツゴツで減速する感じがないのも好感触でした。踏めば踏むほど伸びる感じ。

35cに乗ってて感じたデメリット的なもの

いいことづくめみたいに書いてますが、デメリットも感じましたのでつらつらと。

雨の跳ね上げがすごい

後日に通勤で雨ライドをしたんですが、タイヤの表面積が広い分だけ巻き上げる水の量がメチャクチャ多いです。ポン付けタイプのフェンダーを付けてましたが、川に落ちたみたいな濡れっぷりに。

このタイプのフェンダーです。これもそのうちレビューします。

ママチャリやランドナーのようなフルフェンダーが理想なのかもですが、このタイヤ太さだと対応できる製品も限られてくると思いますので、シューズカバーなどで対応するしかないのかもしれません。

それかドライコンディション専用にしちゃうか。

同じケイデンスでも疲れる

速度維持は楽なんですが、加速時には少し時間がかかっている感覚は否めないです。特に低速ギアにシフトチェンジが間に合わない状態で停車しちゃった時は顕著で、高速ギア+大腿四頭筋パワーでガッと踏んでも、思ったより進んでくれません。マメなシフトチェンジを心がけないといけないようです。

前述の通り同じケイデンスだと巡航速度は25cより速いのですが原動力はやはり人力ですので、心拍数は全体に5%ほど高めになりました。重量増が影響してか、運動の負荷は増えている模様です。平均1km/hの速度増で心拍5%増はコスパ的に良いのか悪いのか、状況によりますかね……。

それと踏めば踏んだ分だけ速度が伸びるとも前述してますが、それのせいもあって、体力に見合わないペースで踏みすぎちゃう感があります。おかげでラスト1時間は燃え尽きてしまってペースメチャクチャでしたね……。この辺は慣れで吸収できそうですけど。

ブレーキの効きが少し落ちる

新しいブレーキシューに変えたばかりなんですが、重くなったせいか少し制動性が悪くなっています。雨の日は顕著で、上ハンだと止まりきれなそうなので下ハンのみで走らざるを得ないときもありました。BBBとかのもっと効くシュー↓に変えたほうが良いのかな……

単調に登り続ける坂はキツイ

アップダウンのある峠ではそれほどキツさは感じませんでした。しかし青森空港前のストレートに5km登り続ける区間はかなりの苦行でした。

重さが増えたせいかタイヤ直径が増えたせいか、踏んでるのに進まないのを実感させられます。斜度がキツい坂は今回はなかったんですが、これで10%とかはヤバそう🤢。

脚つきついでに八甲田山とパシャリ(顔面蒼白)

ダンシングに向いてない?

上に書いた、坂がキツい要因でもありますが、ダンシングしてもモッサリして進まない感じを受けました。急激で間欠的なトルクを掛けても応答性が悪い、と言うか。

長い坂や向かい風の時だと、いわゆる「休むダンシング」で体力温存したいときもありますが、どんどん速度が落ちて前ももに乳酸だけが蓄積されていくという……。

また、停車から漕ぎ出しの時は2~3回転はダンシング状態になりますけど、これも同様にあまり進んでくれず、バランスを崩す事がありました。

振動吸収力を過信してはいけない

北国の春の名物「低温でクラックした路面」。こいつらなんで自転車で走りやすそうなラインだけ割れてるんでしょうね。。。

見るだけでSAN値激減するサイクリスト専用トラップ

いくらエアボリュームがあろうが、踏めばやっぱりガツンと来ます。ちゃんと避けましょう。

なんか共振する?

舗装したての滑らかなアスファルトで35km/hの時だけ、エンジン音みたいな共振が出ました。地味に腕・肩・首に疲労感が……。

しかしこれは自転車全体の構成・バランスによる現象だと思いますのでタイヤ性能云々ではない感じです。ライド終盤でヘロヘロだったので試しませんでしたけど、空気圧調整で軽減できるのかも。

3本ローラーがキツい

(2024/4/12 追記)
太タイヤのままで3本ローラーでZwiftやってみたんですけど、ローラーとタイヤが触れる面積が大きいことに加えて、低圧なせいでローラーに食い込むため、高圧の25cに比べてめっちゃくちゃ重いです。うちの3本ローラーはElite Arion、負荷なしモデルですが25c 7barでも1%くらいの緩やかな坂みたいな抵抗を感じます。これが35c 4.4barだと3%くらいの抵抗感に。ローラーの時だけはMAX空気圧にしたほうが良さそうです。

(2024/5/1追記)
体重にもよるんでしょうけど、MAXでもまだキツかったです。定格オーバーの6barでやっと25cの時と同じ感覚でした。

ちなみにMAX空気圧で一般道路を走ると25cの時と同じようなガツガツの振動になり、重いだけでメリットが少ないという悲しい結果に……。ローラー用に普段は高めで入れておいて、週末サイクリングの時だけ空気を抜く運用が現実的な感じでしょうか。

結論:どっちが好き?

うーん、甲乙つけがたいんですが……。書き連ねてみると35cはなんかもう、「街乗りタイヤ」って位置づけではないような感じがしますね。

街乗りではストップ・アンド・ゴーが中心なので、クイックなブレーキの効きと踏み出しの軽さで25cの方が快適に感じます。実際、通勤で35cのまま乗っててちょっとダルいかな……。高圧にしたら転がりは良くなりますけど重いだけのタイヤになるので、ウーバーイーツの人とか通勤用の人は細いタイヤの方が楽なんじゃないでしょうか。

一方で、峠で下りの時速50km越えのときには、35cの振動吸収力はめちゃくちゃ安心感がありましたし、前腕の振動疲れとサドルの突き上げ感はほとんどなかったように感じます。浮き砂利があるような高速コーナーでも接地面積が広いことからスキッドもなく安心して走れました。安全性は間違いなく35cに軍配が上がります。

それぞれ長所短所がありますけど、ロードバイクは安全に長距離を走ってなんぼだと思いますので、【総合的には35cの方がロード向き※個人の感想です。特に乗るたびに整備とかはしない「週末に30~80kmくらいサイクリングするだけ」みたいなフツーの乗り方の人は、ある程度のチューニングの差も吸収してくれる太タイヤの方が圧倒的にオススメだと思います。

最初に書きましたけど、ブレーキキャリパーやフレーム・フォークでタイヤの最大サイズが決まっていますので、ご自身の自転車に装着出来るかは購入前にきちんと下調べしてくださいね。