ラックサックマーチやってますかー?私はご無沙汰です。夏場はサイクリング一色だけど、そろそろ秋の声も聞こえてくるのでラッキングの話題を。

他のスポーツに比べてラッキングって、消費カロリーの計算がすんなりできないんですよね。理由はアクティビティとしてマイナーなことに加えて、カロリーの計算方法がいまいち確立されていないところもあるのかと。

消費カロリーだけみたい人は↑目次からどうぞ。

今日ではスポーツする人は大半がスマートウオッチやサイクルコンピューターなどを持っているのではないでしょうか。一般的なスポーツアクティビティだと、スマートウオッチ単体でカロリー計算が可能です。

しかしラッキングに目を向けると、知る限りではAmazfit・Xiaomi・Polarなど各種スマートウォッチ、スマートフォンのGPSアプリなどでも、ラッキングのアクティビティは存在していません。

ラッキング、Stravaに完全無視される

サイクリングやジョギングなどのスポーツアクティビティに特化したSNSであるStrava。そのユーザーフォーラムでは日々いろいろな機能追加要望などが活発に議論されているのですが、ラッキングを始めた頃からウオッチしているStravaのスレッドがあります。

「Stravaにラッキングを追加して欲しい」という要望のスレッド

https://communityhub.strava.com/t5/ideas/add-rucking-as-activity-type/idi-p/2252

2022年から始まったこのスレッド、内容はいたってシンプルで「アクティビティにラッキングを追加して欲しい」この一点だけです。

他の人のコメントでも述べられている通り、ハイキングやウォーキングは消費カロリーがラッキングよりかなり低いので、装備重量を入力して消費カロリーをトラッキングできる機能をラッカーたちは待ち望んでいたのです。

Stravaならなんとかしてくれる……!そう思って記事作成の2024年9月時点で275件のいいねと180件のコメントが寄せられていました。世界的にはラッキングがある程度一般的なトレーニングになっているのが伺えます。

「データベースに装備重量のカラムを足すだけだからすぐ出来るでしょ」と言われながら2年にわたって同意のコメントやいいねを集めてきた長寿スレッドでしたが、2024年8月に公式モデレーターからこんな書き込みが。

こんにちは、このリクエストに投票とコメントを追加するために時間を割いてくださったすべての人に感謝します。
当面の間、Stravaにアクティビティ/スポーツの種類を追加する予定はなく、この機能の提案は「Not Planned (予定外)」のステータスに移行されることをお知らせします。
私たちは、これがあなたが望んでいた答えではないことを理解しています。私たちは可能な限り透明性を保つよう努めており、コミュニティに最新情報が利用可能になったときには提供しています。
多くのアイデアの提出があり、人気のあるアイデアであっても実装段階に至らない可能性があることをご了承ください。

はいクソー。

ラッカーたちの祈りも虚しく、丁重にお断りされました。

  • 「e-Bikeやサーフィンは追加したのになんでだ」
  • 「ダークモードを作るのに忙しいんだろう」(皮肉)
  • 「みんなでサブスク解約しよう」
  • 「データベースに重量のカラム追加するだけだろ、無能か」

などの失望コメントでスレッドが大荒れだったのは今も忘れられません。まぁコラボとか考えると商業的には旨味がないアクティビティなのは間違いないので、企業としてのStravaの姿勢も無碍に批判はできないんですけどね。

ラッキングを計測するには

上でも述べてますけど、ラッキングはウォーキングやランニングなどとは運動強度の計算が異なります。装備重量の項目を足すだけではなく、このアクティビティ専用にカロリー計算するアルゴリズムを作るのを嫌ったのかもしれません。

Strava以外のソリューションはないの?

さてStrava公式はナシのつぶてでしたが、このスレッドではStrava以外でラッキングを記録できるソフトについてもディスカッションがありました。

ラッキング用品専門ストアのGORUCKで出している有料アプリではカロリーの自動計算などもあるそうなんですが、GORUCKのパーソナルトレーナーから招待を受けないと使えないようです。

Garminのスマートウォッチにはラッキング用の有料iQアプリがあるそうで。
路面状況や荷物の重量などを入力するとカロリーも自動計算されるらしいんですが、レビューだけ見てるとアクティビティが正常に保存されない場合もあるみたいで、賛否両論みたいですね。
私はGarminウオッチを持っていませんので未確認です。

ハイキングとして記録する場合の弊害

結局、大半の人はStravaやGarminなどで、ハイキングやウォーキングとして記録している人が多い様子です。その場合はラッキング重量は概要欄に記録するみたいですね。

ラッキングをハイキングアクティビティで記録する場合の一番の弊害は、消費カロリーがかなり小さく見積もられることです。

スマートウォッチは、GPSのデータから計算された移動速度と、バックパネル側にある光学式心拍計でスポーツ中の運動強度を測っています。

ラッキングでは重量物を背負った状態で歩行がメイン。なので速度は低め、心拍数もウォーキングよりは高いけど息切れするような極端に高い値になることはまずありません。関節や心肺にあまり負担をかけず、筋トレ未満ウォーキング以上で全身を強化できる、ラッキングのメリットでもあります。

しかしスマートウオッチなどの計測器から見ると、速度も心拍数も低いので「強度が低いアクティビティ」として計算されてしまうのです。ランニングで言うとスロージョグ程度・サイクリングで言うとL2くらい。

各種アクティビティトラッカーでは空荷でウォーキングした運動強度・消費カロリーで記録されてしまいます。カロリーが多いだけなら「思ってたより痩せた!」と逆に嬉しいサプライズでそれほど問題ないんですけれど、運動強度の方はツールの値を信用してしまうと「すげー疲れてるのに全然フィットネス低い……もっとやらなきゃ……」というオーバートレーニングになりかねません。
ていうかなりました。みなさんもお気をつけて。

ラッキングの実際の消費カロリー

ラッキングで消費できるカロリーは下記のサイトで計算できます。(英語のみ)

このサイトは日本人には馴染みのないヤードポンド法表記なので、平均的な体重でキロメートル・キログラムにアバウトに計算し直して抜粋すると下記のようになります。

ペース70kg70kg
+7kg
70kg
+14kg
50kg50kg
+7kg
50kg
+10kg
12:30257342426184269308
11:00316392490226309355
9:30368471594263372429
7:45601762476551
6:158411073668776
1時間あたりの消費カロリー 重りなしの消費カロリーはMETs表から計算

体重の20%の重量を背負ってキロ6分ペースで1時間とかはアスリートの中でも選りすぐりのフィジカルエリートしかできないので参考程度に……。
私たちアマチュアが見るべきはウォーキングペースの、12:30から9:30の上3行です。

この表から読み取れるのは

ということ。ウォーキングだけだと強度が足りなくてダイエット効果が出ないという人も、ダンベルを毎日運ぶだけで1.5倍の速度で痩せます。※効果は個人差があります

ケガ防止のためにも体重の20%を背負うのには、頑丈で荷をストラップで締める事ができる登山用リュックが必須です。Lowe Alpineが街でもあまり悪目立ちしなくておすすめですよ。

Intervals.icuを活用する

データのアップロードはスマートウオッチなどを経由してStravaに送ります。散々文句言いましたけど、アクティビティの同期関連はStravaがやっぱり最強なのでここはショウガナイ。

StravaやGarminなどのツールではアップロードされたアクティビティデータの編集はできないのですが、それらと連携できるトレーニング管理アプリであるIntervals.icuの方は消費カロリー・負荷をあとから手動でも編集できます。

鉛筆つきの項目は手動で変更できます。上の表に倣って、重量に応じて記録された数値に1.25~1.6倍して入力しておくとオーバートレーニングは防げると思います。

カスタム数値も作れますので、ラッキング重量の推移も記録できます。……が、私も初めのうちは記録していましたが、そんなに重量をこまめに変えなかったので今は記録していないです。

Intervals.icuの詳しい解説はこちら↓

GORUCKの消費カロリー計算は正確か問題

ラッキングは大昔からあるトレーニングかつ内容が地味なためか、あまり大規模な運動生理学的な研究はネットでは見当たりません。
小規模な研究なようですがCNNに論文リンク付きの記事がありました。文脈としては「高齢女性の健康維持にレジスタンス運動とラッキングが有効」といった内容ですが、消費カロリーについても言及があります。

ラッキングはカロリーに火を付けます。スミス氏によると、バックパックを持たずに散歩する場合よりも、加重ウォーキングをすると、消費カロリーが30%から45%多くなるといいます。米陸軍によると、体重180ポンドの兵士が35ポンドの荷物を背負って3.7マイル(6キロ)を1マイルあたり15分で歩くと、680カロリーを消費するといいます。

記事ではラッキングの重量と増加する消費カロリーの関係は細かくは書かれていませんでしたが、消費カロリーが45%増えるというのはある程度エビデンスがあると見て間違いないようです。

上記引用の根拠は米陸軍で公開している行軍のマニュアルからのようです。こちらのマニュアルは酸素取り込み量を計測して行った研究で、数値は信頼できると思われます。

https://irp.fas.org/doddir/army/atp3-21-18.pdf
HEADQUARTERS, DEPARTMENT OF THE ARMY : FOOT MARCHES 2022

同条件でのウォーキングだと425kcalの計算で、35lbs=15.75kgの荷重で1.6倍の消費カロリーになっていますね。少なめに出るようですが、GORUCKの計算器は精度はまぁまぁ高い、と言っていいんじゃないでしょうか。アマチュアのダイエット目的なら充分だと思います。

ちなみにこの米陸軍の表、荷重を極端に重くしてもカロリー消費量は直線的には増えないことも見て取れます。重量増による1ポンドあたりの消費カロリーを計算してみると

  • 0->30lbs:8.5kcal
  • 30->50lbs:6.2kcal
  • 50->70lbs:5.64kcal

と尻すぼみになっています。70lbs=31.5kgは我々シロウトが背負うには重過ぎですので、ラッキングの荷重は体重の20%を上限の目安にして、消費カロリーを増やすには速度を上げるか距離を増やすのが良さそうですね。